村の中ものんびり

 衝突があった昨年来、村の出入り口には軍による検問所が設けられ、自動小銃を構えた軍人が通行しようとする人を片端から止めるようになりました。リゾート計画とともに初めて他の街とつながった道路に出たいのに、村人は自由に行き来することができません。しかし面白いことに、村への漁船での出入りには制限がなく、漁師たちは以前と同じように漁船でどこにでも行きます。外部者である私たちも検問所は通れませんが、すぐ手前の海岸に村人が船で海岸に迎えに来てくれれば、軍人たちも見て見ぬ振り。意味のあるようなないような、不思議な検問です。

   一方村人たちの側でも、村を木や竹でつくった手製のバリケードで囲い、独自に検問所を設置しました。お金を出し合ってガードマンを雇い、村の入り口で軍人や私兵の立ち入りを阻止しています。軍人と村のガードマンが睨み合っている構図ですが、実際には村人も軍人もお互い顔見知りになっており、向こうとこちらと両方でのんびり昼寝をしていたりします。

 

 

   零細漁業以外産業がなく苦労してきたサンタメルセデス村ですが、実はこの一連の騒動が思わぬ臨時収入を生み出すことになりました。観光客の襲来です。

にわか造りの「コテージ」

  電気も水道もない、車も入らない静かな漁村に巻き起こった強制移転騒動。まず最初にSNSで、やがて新聞テレビで報道されるようになってから、観光産業に毒されていない鄙びた漁村として俄然脚光を浴び、それを味わいに訪れる人が増えてきました。

フィリピンのベストシーズンである今年の3月から5月には、連日観光客で大にぎわい。海岸には漁師たちの手作りコテージ(という名の掘建て小屋ですが、天気がよければ風通しが良くて快適)が立ち並び、漁師たちは漁を休んで検問所わきまで漁船によるシャトルサービスを実施。多い日には千人の客が訪れたといいます。

幼稚園も元気!先生が一人なので、20人ずつ2回の2部制で運営

村人たちは急遽、アルコールは一人二本に制限し、宿泊1件につき100ペソ拠出といった規則をつくり、秩序を守りつつ収入を確保する道を開きました。この拠出金と村人それぞれが出し合った資金で弁護士を雇い、上級審で闘う準備をしている村人たちの士気は高く、サンタメルセデス村の抵抗は当分続きそうです。